遅まきながら、「ふくしま」集団疎開裁判の支援を始めた。山本太郎の「脱原発ひとり舞台」を読んでこの裁判をはじめて知った。原告のホームページを調べて母たちの痛切な訴えがみにつまされ、25年前のチェルノブイリ大事故との比較を学識者の意見書から学んで事の重大性と、緊急性を学んだ。当時のソ連、今のウクライナベラルーシでどんなにひどい犠牲者を生み出したのか、これまでは他人事だった。写真家の献身的な活動成果の写真集も「ひどいなあ」ぐらいにしか思わなかったが、今は違う。「千年に1度」とも評される福島原発の暴発は、天災などでは決してなく、全くの人災である。「原発安全神話で国民を目くらましし、血税を湯水のようにばらまいて地元住民を買収、国策として進めてきて引き起こした歴然たる政治災害」である。全責任は東電と政府にある。東電と政府が、「千年に1度」にふさわしい規模で、現状回復に必要なすべてをやりとげねばならない。たとえ何兆円、何年かかろうともである。何よりも福島の全住民、別けても子供たち、とりわけ乳幼児の命と健康が心配である。

 郡山の14人の児童生徒の父母たちから出された「学校ごとの集団疎開を」の要求は、その地域の放射能汚染度がチェルノブイリ周辺での移住義務地域に相当することを見れば当然至極といわねばならない。3.11から11ヵ月を経過した現在、ほとんどの地域で、空中線量が積算1ミリシーベルトを超え、地域によってはその5倍から最高15倍に達する地域もあるという。内部被曝についても児童の尿から放射性セシウムが検出されたと報道されている。もう猶予がならないのである。しかるに福島地方裁判所郡山支部は12月16日、同訴訟を却下した。「生命身体に対する具体的に切迫した危険性があるとは認めがたい」というのが理由である。裁判所は原告が提出したチェルノブイリとの比較の問題を完全に無視し、原告側も相手側(郡山市)も全く触れなかった問題、「年間100ミリシーベルト未満の放射線量を受けた場合の内部被曝による晩発性障害の発生確率について実証的な裏付けがない」という問題を持ち出し、「切迫した危険性がない」最大の論拠としたのである。原告側が即時抗告を申し立てたのは勿論である。裁判は今仙台高等裁判所にかかっている。

 福島県内の保護者らで作る市民団体「子供たちを放射能から守る福島ネットワーク」の発表によれば、5月20日~22日に福島市の子供たちからとった尿をフランスの民間団体[ACLO](アクロ)に依頼して解析してもらった結果。セシューム134が尿1リットル当たり0.41~1.13ベクレル。セシューム137が同じく0.43~1.30ベクレル検出されたという。訴訟を起こした郡山市福島市とは放射線被曝の状況はほぼ同じであるから、子供たちの内部被ばくは同様に進行していると見なければならない。(訴訟を起こした某母親の手記より転載)。

 郡山の放射線汚染度とほぼ等しい汚染地域のチェルノブイリでの晩発性健康被害の発生状況

 通常は甲状腺のがん等は10万人あたり数名しか子供には出ないのに、                     (1)5~6年後から甲状腺疾病と甲状腺腫が急増し、9年後の1995年には子供10人に1人の割     合で発病した。                                                (2)甲状腺ガンは甲状腺疾病の10%強の割合で発病、9年後は1000人中13人程度となった。        (矢ヶ崎意見書より抜粋転載)

 晩発性疾病である先天性障害児のチェルノブイリ周辺地域での発生状況。

     (松井意見書より抜粋転載)(無脳児、脊椎ヘルニア、多指、ダウン症、多重性障害など。)

     事故発生前  ・  出生児1000人中   4.08人~4.36人

     (87年~89年)  4.99人~7.82人    (90年~04年) 7.88人~8.00人 

 

福島地方裁判所はこれらのデーターに目をつむったのである。