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<随想>――集団疎開裁判の視点――

90歳の老人がネットから見た

“レベル7” 「ふくしま」 の苦悩

                    

近藤幸男

              (1)     

 

私が今年2月、山本太郎の「脱原発独り舞台」を読んで、「ふくしま集団疎開裁判」をはじめて知り、「ふくしまの子を救いたい」熱い思いが込み上げるままに、裁判支援の運動に加わってから早や5カ月が経とうとしている。

この間、都道に面した我が家の玄関先に「脱原発で子育てに安心を!」の大看板を立て、4月末には「ふくしま集団疎開裁判の支援にご協力を」と看板の文面も前進させた。そして市内をはじめ全国の友人知人に訴えて1000筆余の賛同署名をよせていただき、若干の資金をそえて現地に送った。

 

4月からは、毎日郵送されてくる一日遅れの「福島民報」を通じて、疎開裁判だけでなく現地の出来事が、政治、社会、経済、文化の全面にわたって不十分ながら伝わってくるようになった。さらに5月の始めに「こども福島ネットワーク」にも加わったことで、市民が抱いている放射能汚染へのさまざまな不安や、「県民健康管理調査」検討委員会の指導下に進められている、全県民対象の甲状腺エコー検査の中間発表についても、疑念と不安の声が居ながらにして知れるようになった。

 

この間に、弁護団からチェルノブイリ原発事故の実態を深く分析した意見書があいついで仙台高裁に提出され、郡山市側を慌てふためかせる事態も生まれている。いずれ市側の「答弁書」も提出されるから、法廷での文書による論争が新しい局面に入ることになるだろう。また時を同じくして、チェルノブイリ原発事故の被害状況を研究、解明してきたベラルーシウクライナの医師、科学者が相次いで来日し、各地で講演して事故後26年たった今なお続く放射能被害の惨状を証言したのも、「ふくしま」の放射能汚染問題が国際的な注視の的となっているにとどまらない、科学上の、また医学上の国際的論争の重大な焦点となってきていることの現れではないかと思う。私は今、福島原発事故が「レベル7」であるという事態の重さを改めて痛感している。

           (2)

初めは放射能のもとでの学業を余儀なくされている子どもたちを救いたいという思いだけで行動を始めたのだが、集団疎開をめぐる郡山市の対応や世論の無関心、にもかかわらず全県下ですでに三割余の子どもに甲状腺の病変が発生していること、県の面積の七割が山林で徹底した除染は不可能に近いこと、またチェルノブイリの惨状とその教訓を知れば知るほど、原発事故後一年余を経過した「ふくしま」に集中してあらわれている「混迷する日本」への憂いはますます深まるばかりである。

 

その混迷を切り開く闘いとして発展しつつあるのが「集団疎開裁判」である。集団疎開裁判は福島県内では広く知らているが全国的には殆ど知られていない。福島県下の放射能汚染が、一部の地域を除いては危険なものではないと、政府主導下のメディアによってくりかえし報道されているもとで、五大新聞やテレビがこの裁判を完全に黙殺しているからである。

 

福島地裁郡山支部が、申立人側から提出されたチェルノブイリ関係の証拠など「どこ吹く風」と頬かむりし、政府の原発事故収束宣言と時をそろえて申立却下の判決を下したのもそうした背景があったればこそである。

 

この裁判で争われているのは、子どもたちが安全な場所で義務教育を受ける権利を持つことを裁判所が司法の名において公式に認めるか否かである。しかし「人権の最後の砦」とされる裁判所が、正義の立場に立ちきることは世論に支えられてはじめて可能となる。このことは松川事件裁判を引くまでもなく、最近の布川冤罪再審裁判などにも明確に示されている。

 

この集団疎開裁判において、裁判所の事実認定にかかわる問題として相手側と直接的に争われるのは、福島の放射能汚染の持つ「生命と健康に対する差し迫った危険性」の問題である。この点で集団疎開裁判は高度な科学論争の場となっている。一審では裁判所はチェルノブイリの事故の示す事実に目をつぶったが高裁ではそうはゆかない。

 

私は科学者でも医者でもない九十歳を越えたただの老人だが、チェルノブイリ事故後の周辺国での被害の実態を克明に調査研究したパンダジェフスキー氏をはじめとする科学者、医学者の論証は、福島の放射能に対する安易な予断をきっぱりと拒否する内容をもって迫ってきている。顕著な事例だけに絞って、二,三、提示をしたい。 

(3)

 ①子どもの甲状腺ガン発生の可能性の問題

 

(イ)         ベラルーシでは子どもの甲状腺ガンはチェルノブイリ以前は10万人に0.1人だったものが、事故後チェルノブイリ周辺のルギヌイ地区では1000人中10人以上に発生した。

 

(ロ)         現在福島県下で35%もの子どもに発生が確認されている甲状腺の結節や嚢胞(いずれも他に前例を見ない)は県立医大の医師によって「良性」と判断されているが、チェルノブイリでは5年後から子どもの甲状腺ガン発生が急増した。この事実は福島の子どもたちに現れている結節や嚢胞がガン化する危険性を持つことを警鐘を乱打して教えているものである。

 

 ②ベラルーシでセシューム137が市民の臓器に蓄積されていた問題

 

(イ)ベラルーシの研究者パンダジェフスキー氏はチェルノブイリ事故後 11年たった1997年に死亡したベラルーシ市民、大人と子供の病理解剖の結果について次のように報告している。

ⅰ、心筋 脳 肝臓 甲状腺 腎臓 脾臓 筋肉 小腸 の

8臓器にセシューム137がまんべんなく蓄積していること。

     ⅱ、子どもの蓄積量の方が大人よりもどの臓器でも多い。

     ⅲ、甲状腺に多く蓄積。特に子どもの甲状腺に際立って多い。

 

(ロ)セシューム137が全身あらゆるところに運ばれ蓄積されていると いうことは、全身いたるところで内部被曝を生涯にわたって起こしたことを意味し、あらゆる症状、あらゆる病気や機能不全が生じたことを物語るもの。

 

(ハ)このことから、現在、東北地方や、関東地方で多数訴えられている  多様な症状、たとえば鼻血、喉の痛み、気管支炎、下痢、血便などの症状が放射線の内部被曝に起因する可能性があること。

 

          (4)

福島県は6月12日、昨年の原発事故後4か月間に県民の受けた放射能の外部被曝の推定値を発表した。「1ミリシーベルト未満が51.4%」「いずれの数値も健康への影響は考えにくい」と県健康管理検討委員会は見解を発表したが、県民の健康を脅かしているのは外部被曝ではない。そのような外部被曝を余儀なくされる状況下で県民が受け、また現にうけている内部被曝である。

 

呼吸や飲食によって体内に取り込まれた放射性核種は、各種臓器に運ばれて蓄積され、生涯にわたって放射線を出し続け、人体を傷つける。これが内部被曝である。チェルノブイリにおける死体の病理解剖が示しているのはこの冷厳な事実である。県・市は内部被曝について、「ホールボディカウンター」の台数を増やし、全県民の検査を急いで行うと云い、実施した4月分の検査結果は、「今後50年間の内部被曝量を表す預託実効線量が検査した6846人全員、1ミリシーベルト未満であり」「健康に影響が及ぶ数値ではない。」と新聞発表している。(福島民報

 

だが、この「ホールボディカウンター」による検査では、内部被曝で人体に最大の破壊作用を起こすアルファー線、ベーター線は測定できず、ガンマ―線のみの測定でしかないことを、故意か偶然か、隠した形のままの発表となっている。測定結果の扱い方如何によっては、高額の投資がかえって内部被曝の実相を覆い隠す役割を果たす危険があるといっても過言ではない。

 

6月6日、発表された大学教授らの親子のストレステスト調査結果では、2103人の回答の中で、「洗濯物は外に干さない」や「子どもに外遊びはさせない」と答えた家は昨年と比べ、それぞれ1割前後減っているが、子どもに頭痛・吐き気が「時々起こる・よく起こる」と38・02%の保護者が答え、昨年夏の6倍以上になったという。(福島民報)。 県や市の否定にもかかわらず内部被曝が進行しているのではないかという不安を、見せつけられた思いがした。

 

今、福島県民にとどまらず国民全員が知りたいと思い、その対応策を一日も早く確定したいと願っているのは、恐るべき内部被曝の進行状況であり、その測定が不可能であるとすれば、その進行状況についての根拠ある推定と、万全を期した対策なのである。間違えてはならぬと思う。

 

          (5)

内閣府よると、震災関連の福島県内の自殺者は15人前後とみられているようであるが、広く報道された牛飼いの農家の黒板に書かれた遺書の記憶もまだ消えないのに、5月28日には浪江町で、6月10日には南相馬市で、いずれも警戒区域の自宅に物を取りに行ったまま帰らぬので身寄りのものが捜しに行って、縊死しているのが発見されたという悲しい報道に接しなければならなかった。

    

浜通りの集落では放射線量の強さによって、町や村をいくつかに分割するとか、先祖伝来の故郷に帰る見通しが立たないから他人の街や村の中に「仮の町」を作るとか、何とも暗いニュースばかりである。山地の多い中通りの町や村も、本格的に除染を徹底してやるには山林を根こそぎ伐採せねばならず、数十年かかるという。お先真っ暗と言いたくなる現実である。

 

政府と東電の責任で、子どもだけでも他県に移住させ、その間に徹底した除染をやる。せめてそのくらいやらねば福島は再生できないのではないか、と思えてくる。しかしそんな大事業を今の政府や彼らを背後から動かしている財界に求めても、やりっこないことは明白である。それどころか彼らは、福島の原因究明は棚上げにしたまま大飯原発の再稼働を力ずくで押し切ろうとしている。

 

そのような彼我の闘いの切迫した最中の6月11日、福島県民1324人が東電の勝俣恒久会長、清水正孝前社長ら15人と、政府の原子力委員会斑目春樹委員長、寺坂信昭前保安院長ら15人、それと県の放射線健康管理アドバイザー3人を福島検察庁に「告訴・告発」したというニュースが飛び込んできた。

 

地検前で記者会見をした告訴・告発団の武藤類子団長が「一人一人が人権を奪われ、困難な生活を余儀なくされている。辛く悲しい思いをしている人々のためにもこの訴訟勝利させたい。」と語ったが、”レベル7“の下での闘いはいよいよ本格的なものとなってきたと思う。この勝利を見届けるためにも、あと10年は生きなければと思っている。(終)

 

  ふくしまの子ら思いつつ

              五月十五日

                      近藤幸男   

 

三割余の子の甲状腺に病変が出でしを県は「良性」とのみ

ここ四、五年の子らの疎開が肝要と識者語るをなぜに聞かざる

チェルノブイリの教訓知れば知るほどに胸の痛みの耐え難てとなる

「権利としての疎開」の法案を国会に上程せんとの運動起こる

夏休みに被曝の子らの保養をと無力の老いがやきもきといる

祭りの日赤飯と煮しめ給われば孤老は情けにただおろおろと

“トッキョキョカキョク”確かに聞けり杜鵑(ほととぎす)今日補聴器有難

菜の花の茹でし蕾のほろほろと甘く苦ければ日本の味

 

 

10年後、20年後の次代を担う子どもたちに

「この夏休み」集団保養を

県・市町村の計画立案を期待する

                                           近藤幸男

 

<問題あり> 平成23年度子どもの健康調査

第6回福島県民健康調査の結果が4月末発表された。国指定の警戒区域等避難区域の三市七町三村の18歳未満の住民47766人を対象とした甲状腺エコー検査を、約80%の38,114人が受診したという。

県は検査結果の判定をA,B,C3ランクに分けて発表したが、何とも理解し難いのはA判定の分類の仕方である。

A1)結節や嚢胞を認めなかったもの。

24,468人(64.2%

(A2) 5mm以下の結節や、20mm以下の嚢胞を認めたもの。

13,460人 (35.3%)

症状ゼロの人と軽度の症状の子どもが一緒にされ、くくられていたこと。

(ご丁寧に両者合計の99.5%までかきそえてある。)

 B判定― 5.1mm以上の結節や20.mm以上の嚢胞を認めたもの

186人 (0.5%)

C判定―甲状腺の状態等から判断して、直ちに二次検査を要するもの 

0人 ( 0 %

この発表に早速飛びついたのが朝日新聞である。「しこりがないなど問題ないとされた子どもが99.5%を占め、残りも良性の可能性が高いと判断。」と書き

「子の甲状腺「安心」福島県38千人調査」の見出で報じた。

県が暗黙の誘導をして朝日が乗ったのか、検討委員会側にも作為があったのではと感じたのは私の僻みか。県立医大の先生方は「とにかく今は安心させておこう。安心こそが悪化を防ぐ妙薬。」と本気で考えているのかもしれない。

小さい結節や嚢胞は急速に悪化することはないにしても、病変の兆候であることには変わりはない。チェルノブイリ事故でベラルーシでは爆発直後から小児の甲状腺がんの発生が始まり、翌年は4倍に、2年後5倍、3年後7倍、4年後29倍、5年後59倍、6年後66倍、7年後79倍、8年後82倍にと増大したという事実をどう見ているのでしょうか。(M.Vマリコ氏の著書より)    

 

      校庭・園庭の使用制限4月から解除!

        ホットスポットお構いなしに?

 

郡山市はこれまで13時間以内に制限してきた、校庭、園庭の使用制限を除染が進んだと、4月から解除した。これを知った市民団体などが情報公開条例も活用して、ホットスポットが高線量で残っている事実を掴んで市に抗議。市も使用制限の解除撤回まではゆかなかったが、ホットスポットのさらなる除染を始めた模様。市は子どもたちの放射線被ばくの累積、内部被曝の恐ろしさをもっとまともに勉強してほしい。内部被曝はあとになって知ったのでは取り返しがつかないのです。広島、長崎の「ぶらぶら病」に続く「福島の『ぶらぶら病』」など絶対に受け入れられません!。

 

近づいた夏休み  県・市町村は

子どもたちの本格的「保養」の計画立案にすぐ着手を

チェルノブイリ原発事故(19864)のさい、5年半も現地にとどまって子どもたちの治療にあたった医師菅野昭(長野県松本市長)は「チェルノブイリの経験からしても子どもたちのここ45年の集団疎開が大事」と語っています。「とにかく放射線のないところで心身の保養をすること、たとえ夏休みの1ヶ月間であってもするとしないとでは大きな違い」と。子どもたちの夏休みの本格的保養計画を立てるのは行政の仕事であり責任です。放射線のない都道府県や市町村に協力を要請して、具体化を図るべきです。去年はあわただしくてできなかったかもしれないが今年は準備の時間は十分あります。直ちに取り掛かるべきだと思います。いかがでしょうか。(以上・2012.5.9)

 

政府は「ふくしま」の子どもの命と健康を守るために

集団疎開の実施を即刻決断すべきである

―憲法記念日、子どもの日を前にして訴えるー

近藤幸男      

 

5月3日の「憲法記念日」、5日の「子どもの日」が目前に迫った。政府はこの記念すべき時を捉え、従来の行き掛かりを捨て、放射能と闘いながら生き継いでいる福島県下の小中学生の集団疎開実施へ、方針の大転換を決断すべきである。

「一介の市民のくせに出過ぎたことを」と、いぶかる向きもあるかもしれないが、私は過ぐる戦争・殺戮の時代を凌いでいま90歳を越え、天命の日々を生きる一老人であるが、私の背後にはアジア全域の2000万人を超える大戦犠牲者の無念の叫びがある。その悲痛な思いが私をして言わしめているということを是非わかってほしい。

 

放射能は人類のみならず、すべての生命体とは異質、異次元の存在である。それを人間の社会生活に取り込んで、始めは敵対者を壊滅させる大量殺人兵器として、のちには無限大のエネルギーを生み出す道具として駆使しようとした。そこにわれわれ人類の犯した根本の過ちがある。いまこそ核兵器の廃絶とともに、原発ゼロの時代を切り開かねばならない。2度の原爆の惨禍を受け、今またレベル7の大事故を経験しつつある日本人が、今こそこの真実の声を何ものも恐れることなく云い放たなければならない。

 

とはいえ、「それは容易ならざる大事業」であるからと、政府はもとより福島県当局も「一部の人間の発言など聞く耳持たぬ」態の「無視」を持って対応してくるであろう。はたして現行の教育指導体制のまま月日の経過を待つだけでよいのであろうか。10年後、20年後の次世代の人々の運命の安穏を保障できるのか。事態は重大な展開を示しつつあり、識者の憂慮の声は今急速に高まっている。その識者の声の紹介に入る前に、県当局の公式発表やローカル紙、インターネット情報を通じて得た私の知る限りの被災地の現状を見ておきたい。

 

すでに今年2月、県立医大で甲状腺のエコー検査をした福島第1原発近隣4市町村の小中学生3765人のうち約30%に、また札幌で同様な検査をした自主避難の小中学生170人のうち約20%に甲状腺に「しこり」や「嚢胞」といった病状が発生していることは、一部の週刊誌でも大きく報道されたからご存知の方もいると思うが、そのことの持つ意味合い、今後の展開の予測については、大きな不安を抱きながらも、県立医大の先生方の流す「放射線とは無関係」「良質のもの」という談話や誤った報道のとりことされている人々が大部分のように見える。

 

だが集団疎開裁判を闘っている父母たちやその周辺では、成人に近い男の子3人の突然死の話や、鼻血が止まらなくなったり、下痢が何日も続いたり、原因不明の発熱が再三おこるなど、子どもの健康状態への不安が、日常的な会話となっているという。筆者自身の直接の見聞によっても「福島民報」は4月22日付紙面に「鼻血は被曝が原因か」という見出しの囲み記事を掲載、『放射線被ばくで鼻血がでた』と心配されていますが、放射線が原因ではありません」との県放射線リスク管理アドバイザーの回答を掲載している。この報道は、たまたまあった一人の母親の疑問に答えたということとは受け取れなかった。

 

いま、チェルノブイリ大事故の現地で調査研究をされている複数の外国人医師と医学者が、先々週来、福島、東京、北海道など各地で貴重な巡回講演をされているが、その内容は別の機会にお知らせできると思うので、ここでは日本人の医師である二人の方が、福島県下の放射能汚染の現状をどのように見ておられるのか、また「政府と全国民への事実上の警告」として筆者が受け止めた発言内容を紹介したい。

 

その一人はかつてチェルノブイリの大事故の際、5年半も現地にとどまって子どもたちの治療に専念された医師であり、現在長野県松本市の市長をしておられる菅谷昭氏であり、もう一人は自らも広島の原爆被爆者でありながら今日まで被爆者治療の先頭に立ち、原爆による内部被曝を「ぶらぶら病」として28個の裁判で、ことごとく認めさせるという大仕事をされた95歳の現役の医師、肥田舜太郎氏である。それぞれの発言の要点を以下に列挙したい。

菅谷昭氏談

菅谷氏は最近の「金融ジャーナル」の電子版紙面で、編集局長島田一氏のさまざまな質問に答えて氏の見解を表明しているので箇条書的に要点を列挙する。

 

       政府は汚染状況を全部公開していない。一番心配なストロンチウムも甲状腺ガンを引き起こす放射性ヨウ素の汚染マップも出していない。

       放射能汚染基準として世界中が採用しているチェルノブイリ基準を採用しないで1年がたってしまった。被曝し続けていることを思うといたたまれない思いだ。

 

  政府の対策委員会には現場のことを知っている人がいない。机上の空論だ

8月に一般公開したセシウムの汚染マップを私が作成したチェルノブイリの事故10年目の放射能汚染図と比較するとよくわかるが、今回の福島の事故で放出された放射性物質はチェルノブイリの10分の1~2程度と言われてきたが、2枚の図を比較すると福島の方が汚染度合いが高い。こうした真実が徐々に住民に知れてきて、最近では福島から移住する人が増えてきている。チェルノブイリの低線量被曝地で起こっていることを知れば当然の選択だろう。

 

       ベラルーシでは原発から90キロ離れた軽度汚染地域のモーズリ(私も住んでいた)では、子どもたちの免疫機能が落ち、風邪が治りにくくなったり、非常に疲れやすくなったり、貧血になるといった、いわゆる「チェルノブイリエイズ」の症状が出ている。このモーズリに相当する汚染地域は地図で見ればわかるが、福島市郡山市も含まれている。チェルノブイリエイズのような症状を発症する可能性も否定できない。

 

  国は除染に過度に期待しすぎている。安全レベルまで除染するには数十~数百兆円かかるのではないか。福島は7割が山林である。その山を完全に除染するには木を根こそぎ切り落とし、岩肌が見えるほど土を削る。畑も20センチ削ればいいとしても肥沃度が落ちてしまい、作物は育たなる。それくらい徹底して行う必要がある。結局数十年以上かけて待つしかない。子供たちだけでも4~5年程度安全な地に移してあげるべきだ。せめて半年に1回ぐらいは無料の検診を行い、発病を早期発見して助けるべきだ。

、      

肥田舜太郎氏談(扶桑社新書「内部被曝」12年3月刊760

(じわじわと命を蝕む低線量被曝の恐怖)

私は95歳になる内科医です。広島で被爆して以来、67年間、6000人以上の被爆者と向き合ってきました。その経験から皆さんにお伝えしておきたいことがあります。それは放射性物質がもたらす内部被曝の恐ろしさについてです。(中略)呼吸や飲食によって体内に取り込んだ放射性物質によって、1日24時間ずっと低線量で被爆され続けることで、どんな影響が表れるのか、医学界ではそのことについて長らく無視されてきました。

「低線量の被曝であれば問題ない」と説明する”専門家”や政治家がいます。彼らは「(被害が出るという)データがない。=問題ない」と言っているだけです。「データがない」というのはウソです。低線量長期被曝に関する調査結果はたくさんあります。それを彼らは「なかったこと」として、無視しているに過ぎません。   

            

福島原発事故の影響でこれから何が起こるか>

  福島でヒロシマナガサキと同じことが起こる。

 広島や長崎では原爆の爆発のあった幾日か後に、市に入った人も被爆しています。今の医学では診断できない不思議な病気が起こって多くの人が大変苦しみました。また長期的な影響も心配されます。50年、60年たってからガンや白血病などの悪性の病気になって、頻繁に入退院を繰り返しながら、弱って死んでゆきます。放射線とはそういう性質を持っているのです。

 

  「原爆ぶらぶら病」が東日本でも起こりうる。

福島第1ではセシウム137だけ見てもヒロシマ型原爆の168発分も放出されているのです。広島、長崎では被爆者と呼ばれている人は「原爆ぶらぶら病」になりました。今まで何でもなく働いていたものが、ある瞬間その発作が起きると、急に体が動かなくなってしまうのです。いくら体がだるいといっても周りの人には理解されません。病院でいろいろな検査をしても何も出てこない。「悪いところはないから、家で十分休養を取ってください」と言われるか、「ノイローゼ」扱いされてしまいます。広島長崎ではこういうのを「原爆ぶらぶら病」と名付けて国の責任を追及しました。(広島では2003年からこの種の患者による原爆症の認定を求める裁判がが次々と起こされ、28の裁判すべてで、(政府側は認めなかったが)裁判所は原爆による病気だと認定しました。

  女性と子どもには特に注意が必要。

  遺伝的影響の可能性も。放射能によって胎児の成長が阻害され奇形児などに。

  何か変化があったら記録しておくこと。

 

<体を侵す放射線被害>

  外部被曝は主にガンマ線原発に働く人以外は危険性は少ない。恐ろしいのは内部被曝。呼吸、飲食によって体内に取り入れられた放射性物質は、体内の組織や器官に沈着、そこから放射線を生涯にわたって出し続ける。

  ストロンチウムの毒性の強いこと。③セシウムは男性の方が蓄積しやすく心筋梗塞を起こしやすいこと。(詳細は著書をお読みください。)以上

「ふくしま」の子らを守るために

声を大にして・再び発言する

                 近藤幸男

 

私は3月5日付のこの欄で、「週刊文春」3月1日号のトップ記事「郡山4歳児と7歳児に甲状腺ガンの疑い!」の報道に関連し、原発事故による放射能汚染では「内部被曝が重大」、子どもらにとっては「3年一巡りの甲状腺検査を待つだけでは危ういのではないか」との問題を提起し、県当局に対し「3年がかりで一巡する」甲状腺エコー検査だけでなく希望者には要求に応じた検査を随時すべきではないのか、と強い批判的疑問を投げかけた。

ブログを読まれた方は大方同意をされたと思うが、一老人のこの心配がたんなる「杞憂」などではなく、まさに今日当面する問題の図星をつくものと言ってもよいくらいの問題提起であったことを、2月末に仙台高裁に急遽提出された矢ヶ崎克馬琉球大学名誉教授の意見書(4)のコピーに目を通す機会を得て、私は改めて確信した。私は仙台高等裁判所が郡山をはじめ重度の放射能汚染地域の小中学校の集団疎開の必要性と緊急性を認め、速やかに判決を下されるようという願いを、ますます強くしている。

<再録資料>

福島と札幌で行われた検査については、本ブログの前号で週刊文春の記事を引用して述べているが、福島の検査の対象地域が不明確であったり、札幌の検査の対象者が福島からの自主避難者だけではなかったことなど、不正確な部分も含まれていたので、矢ヶ崎意見書に基づいて一部訂正して正確なものとし、改めて再録すると次のようになる。

福島(南相馬市川俣町、浪江町、飯館村)の18歳未満の3765

  (内)2622人(696%)には しこりや嚢胞はなかった。

     1117人(297%)に 5ミリ以下のしこりや20ミリ以下の嚢胞があった。

      26人(07%)に 51ミリ以上のしこりや201ミリ以上の嚢胞があった。

 札幌(福島県からの自主避難者ほか)の18歳未満の170

  (内)136人(800%)には しこりや嚢胞はなかった。

      30  (176%) に 5ミリ以下のしこりや20ミリ以下の嚢胞があった。

      4人 (23%)に 51ミリ以上のしこりや201ミリ以上の嚢胞があった。

 

以下に矢ヶ崎意見書(4)の要点を列挙して、ブログの読者が問題の所在を正確に理解されるのに少しでも役立ちたいと思う。しかし問題はかなり専門的分野にわたり、かつ国際的な意見対立をも含むものであるだけに、少なからぬ困難が付きまとっているように思う。疑問点の提示だけに終わることもあると思うが、ご寛恕を乞いたい。

 

      矢ヶ崎意見書(4)のの概要

 

標題―子どもの甲状腺「しこりと嚢胞」は健康保護体制の遅れを警告する―

 

矢ヶ崎氏は「はじめに」のなかで要旨次のように問題の所在を指摘する。

昨年9月には、チェルノブイリと比較すべき福島における子どもの被害のデータがなかったが、私は福島においても子どもの甲状腺疾病と甲状腺腫の発生のありうることを警告した。それが半年を置かずに具体化した。子どもの甲状腺検診の実施によって、2か所からその指摘を裏付けるデータがでてきた。

(1)            1月25日に県が発表した福島第1原発周辺4市町村の子どもの検査   結果

(2)2月23日ごろ「週刊文春(31日号)に発表された札幌の内科医に  よる主に自主避難者を対象にした甲状腺検査

 矢ヶ崎氏はそれぞれの集団の検査で30%と20%に「小さいながらもしこりと嚢胞を確認した」ことを指摘し、このしこりと嚢胞をどう見るかについてチェルノブイリ原発事故後に周辺地域に記録されたデータと内部被曝の科学的論理に従って解析する」として

以下のように重要な指摘をしている。

(1)ベラルーシの市民の臓器に蓄積されたセシューム137について

1997年(事故後11年)に死亡した市民の病理解剖の結果として

内部被曝で体内に入った放射性セシュームは

心筋、脳、肝、甲状腺、腎、脾、筋、小腸

に蓄積されていた。特に甲状腺には一番多く蓄積され、子どもの蓄積量が大人よりはるかに多いことも特徴である。

このことは福島原発事故の後、東北地方や関東地方で多数訴えられている多様な症状(鼻血、喉の痛み、気管支炎、下痢、血便、等々)はすべて放射線内部被曝が起因している可能性をしめすものと見なければならないこと。

 (2)またこれらのデータは、福島原発事故後にあらわれている甲状腺のしこりや嚢胞がこれから現われるであろう「発ガンなどの健康被害」を暗示しており、子どもの健康保護を急がねばならないこと。「教育を安全な場所」で展開するため、「疎開」が求められていることを示すもの、と厳しく指摘しています。

 

事態は極めて深刻だと思うのです。世論がそれほど騒がないのは、誰もが人間の体の中で進行中の内部被曝の実態を絵に描いたようには思い浮かべられないからだと思います。

矢ヶ崎先生が東京民報の記者に語ったお話(111120日号)からそのごく一部を転載させてもらいました。内部被曝の恐ろしさが身に迫ってきます。

      矢ヶ崎先生のお話(一部)

 「放射性のホコリを吸い込んだり飲み込んだりした場合。人工の放射性物質は天然のものと比較して集団をなして微粒子の状態を取ることが特徴で、直径が1ミリの千分の1のホコリには1兆個の原子が含まれます。体内に入った放射性ホコリから放射線が発射され被曝します。これが内部被曝です。外部被曝は主にガンマ線だけに被曝しますが、内部被曝では飛ぶ距離は短いが物質との相互作用が強いアルファ線ベータ線で体内の組織が被曝することになります。内部被曝の場合は密に分子切断が行われるので、DNAの鎖が2本とも切断され、生物学的修復作用の働きで間違って再結合する可能性が増大します。これを変成と言いますが何十回も変成が繰り返されるとガンが発生するといわれます。」(以下略)

                       2012,3,30

「ふくしま」の子たちを守るために

発 言 す る       

                       近藤幸男

 

週刊文春3月1日号のトップ記事「郡山4歳児と7歳児に甲状腺ガンの疑い!」の報道は、「ふくしま集団疎開裁判」の支援を始めたばかりの私にとって、衝撃的であった。文春報道が正確であることを前提として、その要点を列挙すれば次のようになる。

  福島第1原発の事故を受けて札幌に避難している親子309名(子供139名、大人170名)を対象に、地元の内科医がボランティアで甲状腺の超音波(エコー)検査を行った。

  内科医は「自費で技師を2人雇い、甲状腺専門医と一緒に、3日間、1日約100人づつ検査した。検査の方法は福島で現在行われている検査と同じ方法」にした。

  「しこりのあった7歳女児と4歳男児の2人に加え、19歳以上の「大人」9人の、計11人に、甲状腺ガンの疑いがあった。うち大人一人はすでに甲状腺ガンが確定、切除手術も決定」した。

  「7歳女児の甲状腺に8ミリの結節(しこり)が、微細な石灰化を伴って見られた。」この画像を見た専門医は「児童にはほとんどないことだが、ガン細胞に近い。2次検査が必要。今までこんなのは見たことがない。」と言い、「2歳の妹にも、ガンの疑いはないものの、2ミリの石灰化したものが発生」していた事実を告げた。この姉妹と母親が郡山を離れたのは昨年6月であるという。

 

 以上が、福島県民が自主疎開した札幌で、ボランテア医師らの自主的な検査によって発見された事実である。以下これを第1の事実と呼ぶ。

             

 一方、札幌での緊急事態の発見とほぼ同じころ、福島で第5回「県民健康管理調査検討委員会」において、18歳以下の県民の甲状腺検査の結果が発表された。それによると

 検査した3765人中、26人から、5・1ミリ以上の結節(しこり)及び20・1ミリ以上の嚢胞(のうほう)がに見つかったが、それらは「すべて良性」であった、という。

そして、福島県立医大の鈴木真一教授は「(上記の)26名はいずれも6歳以上である。5ミリ以上の結節、20ミリ以上の嚢胞が5歳以下で見つかることはありえない。」と会見の席上で明言した、という。

付け加えて言えば、この18歳以下の福島県民の甲状腺検査は、3年間かけて1順目の検査が行われるという。(その後時間をおいて追跡調査を行う必要がある)上記の数字はその進行途中での中間の検査結果の発表である。

   

これが福島県当局の手で進められている全県的検査結果であり、

以下第2の事実と呼ぶ。

 

以上に述べた2つの事実は必ずしも一致した方向性を持っていない。一致しないだけではなく、深刻な問題を全国民につきつけているのだと思う。

それは一口に言えば、札幌での検査結果は、福島県民の放射能の内部被曝に万全を期して対処するには、「3年間一巡り」の甲状腺検査だけでは危ういのではないかという懸念を提起していると見なければならないからである。

 

被爆直後の県民の内部被曝の実態は何ら調査されていない。3度にわたる水素爆発によってまき散らされた放射能を帯びた物質は、風に乗って主として北西の方向に流れ、何も知らされていない多くの県民を襲った。住民の放射能汚染が問題になったのは数日もたってからである。この間多くの県民は外部被曝だけでなく呼吸と飲食物による内部被曝も避けるわけにはゆかなかった。政府も、県も内部被曝については何の検査も、調査もしなかった。

それだけに、通常は起こり得ないとされている乳幼児の甲状腺異常が起こりうることが、札幌の甲状腺検査で発見される事態となったのである。検査は3年近くも待たずに母親たちの要求に即応して、可能なかぎり迅速に行うべきではないのか。それによって異常が発見されなければそれに越したことはない。父母たちの不安を拭い去るだけでも大きな効用があるといわねばならない。

 

報道記事の中にも甲状腺専門医の言として「原発事故が起こった今、『いままで見たことがないもの』を見ている可能性がある。従来の基準が絶対とは言えないのでは」との言も紹介され、また別の甲状腺学会関係者の発言として「放射線に対して感受性の高い1歳や2歳の子どもが、事故から1~2年後まで受信できなくても大丈夫と言い切れるかは疑問」「早期検査が望ましい」との声をを紹介している。

 

ここで一つ確認しておきたいことがある。それは私が直接に国際機関にあたって調べたことではないが、週刊文春の上記の報道によれば、「小児甲状腺ガンは、チェルノブイリ原発事故で唯一公的に認められた被曝による健康被害であり、事故から10年後の1996年、IAEA (国際原子力機関) WHO(世界保健機構)EU欧州連合)の三者による合同国際会議において「原発事故と因果関係が明らかである」と総括されて」おり、しかもその被害の実態は旧ソ連ベラルーシにおいて「事故前の10年間に小児甲状腺ガンを発病した子供の数7人に対し、事故後は508人に上っている」という、驚くべき数値を発表していることである。

 

しかし、福島での現実を見ると寒々しいものを感ぜざるを得ない。県民健康管理検討委員会座長でもある山下俊一福島医大副学長は全国の日本甲状腺学会員に対して要旨次のようなメールを送ったことを自らも認めている。「(3年間で一巡の県の甲状腺検査の結果に関連して)先生方にも、この結果に対して、保護者の皆様から問い合わせやご相談が少なからずあろうかと存じます。次回の検査を受けるまでの間に自覚症状等が出現しない限り、追加検査は必要がないことをご理解いただき、十分にご説明いただきたく存じます)というのである。

セカンドオピニオン」にはかかわるな、という抑止のメール以外の何物でもないではないか。(註・セカンドオピニオン―より良い治療法を見出すために主治医以外の医者から聞く意見) いまこそ総力を挙げて、原発被曝者の命と健康を守らねばならない時に、どのような神経をお持ちの学者なのであろうか、疑いたくなる。すでに福島県内においては、県の検査の順番をじっと待つ以外に道はなくなっているとも仄聞している。

検討委員会の医学者としては、3年間にわたる甲状腺検査を整然、粛々と進め、膨大な検査資料を精査することに大いに情熱をもって立ち向かっているのであろう。それはそれとして大事なことであり、世界的意義を持つ事業であろう。しかしそれに違いないとしても、チェルノブイリと同等の大事故を現に体験し、県民の内部被曝はいまも進行中なのである。人々の発病を防ぎ、不安をなくすことこそが、東電と、国、県の第一義的課題であることを決してないがしろにしてはならないのである。検討委員会に席を連ねるものは、このことを深く銘記すべきであると思う。(2012.3.5)

 

 

 

 遅まきながら、「ふくしま」集団疎開裁判の支援を始めた。山本太郎の「脱原発ひとり舞台」を読んでこの裁判をはじめて知った。原告のホームページを調べて母たちの痛切な訴えがみにつまされ、25年前のチェルノブイリ大事故との比較を学識者の意見書から学んで事の重大性と、緊急性を学んだ。当時のソ連、今のウクライナベラルーシでどんなにひどい犠牲者を生み出したのか、これまでは他人事だった。写真家の献身的な活動成果の写真集も「ひどいなあ」ぐらいにしか思わなかったが、今は違う。「千年に1度」とも評される福島原発の暴発は、天災などでは決してなく、全くの人災である。「原発安全神話で国民を目くらましし、血税を湯水のようにばらまいて地元住民を買収、国策として進めてきて引き起こした歴然たる政治災害」である。全責任は東電と政府にある。東電と政府が、「千年に1度」にふさわしい規模で、現状回復に必要なすべてをやりとげねばならない。たとえ何兆円、何年かかろうともである。何よりも福島の全住民、別けても子供たち、とりわけ乳幼児の命と健康が心配である。

 郡山の14人の児童生徒の父母たちから出された「学校ごとの集団疎開を」の要求は、その地域の放射能汚染度がチェルノブイリ周辺での移住義務地域に相当することを見れば当然至極といわねばならない。3.11から11ヵ月を経過した現在、ほとんどの地域で、空中線量が積算1ミリシーベルトを超え、地域によってはその5倍から最高15倍に達する地域もあるという。内部被曝についても児童の尿から放射性セシウムが検出されたと報道されている。もう猶予がならないのである。しかるに福島地方裁判所郡山支部は12月16日、同訴訟を却下した。「生命身体に対する具体的に切迫した危険性があるとは認めがたい」というのが理由である。裁判所は原告が提出したチェルノブイリとの比較の問題を完全に無視し、原告側も相手側(郡山市)も全く触れなかった問題、「年間100ミリシーベルト未満の放射線量を受けた場合の内部被曝による晩発性障害の発生確率について実証的な裏付けがない」という問題を持ち出し、「切迫した危険性がない」最大の論拠としたのである。原告側が即時抗告を申し立てたのは勿論である。裁判は今仙台高等裁判所にかかっている。

 福島県内の保護者らで作る市民団体「子供たちを放射能から守る福島ネットワーク」の発表によれば、5月20日~22日に福島市の子供たちからとった尿をフランスの民間団体[ACLO](アクロ)に依頼して解析してもらった結果。セシューム134が尿1リットル当たり0.41~1.13ベクレル。セシューム137が同じく0.43~1.30ベクレル検出されたという。訴訟を起こした郡山市福島市とは放射線被曝の状況はほぼ同じであるから、子供たちの内部被ばくは同様に進行していると見なければならない。(訴訟を起こした某母親の手記より転載)。

 郡山の放射線汚染度とほぼ等しい汚染地域のチェルノブイリでの晩発性健康被害の発生状況

 通常は甲状腺のがん等は10万人あたり数名しか子供には出ないのに、                     (1)5~6年後から甲状腺疾病と甲状腺腫が急増し、9年後の1995年には子供10人に1人の割     合で発病した。                                                (2)甲状腺ガンは甲状腺疾病の10%強の割合で発病、9年後は1000人中13人程度となった。        (矢ヶ崎意見書より抜粋転載)

 晩発性疾病である先天性障害児のチェルノブイリ周辺地域での発生状況。

     (松井意見書より抜粋転載)(無脳児、脊椎ヘルニア、多指、ダウン症、多重性障害など。)

     事故発生前  ・  出生児1000人中   4.08人~4.36人

     (87年~89年)  4.99人~7.82人    (90年~04年) 7.88人~8.00人 

 

福島地方裁判所はこれらのデーターに目をつむったのである。